撮影を終えて病院に着いたのは、午後6時30分頃だった。
入院患者の面会時間は、平日は午後3時から午後7時までである。
病室には『面会謝絶』のプレートが貼られていて、少し開け放たれた扉の中には、
かすかにベットの角が見えた。
朝、知り合い、いや、知り合いと言うより親父みたいに思っているその知り合いの奥さんから電話が入った。
「お忙しいでしょう......」で始まった言葉が次第に涙声に変わっていった。
事情を説明されると同事に、私は体の力が抜けてゆくのを感じた。
ガンである。それも末期のガンを宣告されたと言うのだ。
知り合いとは、写真を通じて出会った。
歳はかなり上であるが、デジタル写真では私が先に始めていたこともあったので、
「先生、先生」と私のことを呼んでくれている。
アマチュア写真歴も相当長くて、4×5インチの大型カメラの愛好家でもある。
月に数回程写真の話をしに来られる。しかし、この一ヶ月は顔を見なかったが、
心配なんてみじんもなく、どうしているのだろう位にしか思っていなかった。
受話器から聞こえてくる話は、かなりの衝撃であった。
もう、返す言葉すら言葉にはなっていなかった。
撮影は、分刻みに進んで行った。いつもより、長く感じる。
撮影を終えて、面会時間に間に合う様に病院に急いだ。
病院に着いたのは、午後6時30分頃だった......。
面会謝絶
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